わたしは要領の悪い人間だ。努力はしてみたけれど、結局わたしはわたしのままで、その影響は服にも影響する。
手際良く服が着られない。思っているのとはちがうけれど、とりあえず、これ着とこう、みたいなことが苦手なのだ。
例えばこういうことだ。
クローゼットの前に立ちすくんで、何が着たい?と自問自答する。
すると、もうすぐ女子会だ、だったら気分変えたい、こんな服装で行きたい、と思う。その予行演習をしよう、と考えはじめる。
慣れきったスタイルから抜け出して、非日常を味わうのだ、と唐突に願う。
というのは、居心地の良い服装、安心できる地区、いつもの家族と友人、いつものスーパーでいつもの肉と野菜……てな具合に、いくつものマイワールド的枠組みが、年々増えていき、そこから逸脱するのが怖い自分がとても嫌だ。
だから、いつものジーンズより布帛のパンツ、ユニクロレディースストレッチパンツを久しぶりに履こう、と思った。
いまさら履いてみるとサイズがぴったりで、ウールライクとは良く言ったものでサマーウールのような見た目で、シルエットがわたしのいびつな下半身に合う。
このパンツに白シャツを着て、ブラックパンプスを履くだけで、今時は非日常になれる。
電車に乗るとき、前に座る座席の人達の靴を見るのが楽しみだ。というのは本当は、着ている服を観察したいけれど、じろじろ見るのは失礼なので足元なら観察しやすいからだ。
すると時々、全員スニーカーだったりすることがあり、パンプス、ローファー人口って激減してるなぁ、と気づかされる。
カジュアル化は足元だけではなくて、服装も、流行りの前開きロングワンピースとジーンズ、フレアジーンズにボリュームブラウス、ウエストゴムのワンピースにスパッツ、などリラックスした服装が目立つ。
サイズの合ったワンピースや、ウエストゴムじゃないスカート布帛のパンツを着ている人が激減しているのがわかる。
カラダに沿ったコットンの白シャツを、抜き襟じゃなく着て、ヒップの形に合った布帛のパンツを着るだけで、違う雰囲気が漂いはじめ、とどめのブラックパンプスを履くことで、別世界になる。