散歩と称して、ユニクロや無印の店舗をグルグル徘徊するルーティンを捨て去りたい。捨てるべき取り替えるべきは、服じゃなく、行動半径内でコスパ抜群の服ばかりねらう退屈な行動パターンだった。
と、やっと気がついたのに、早くもユニクロメンズダッフルコート、12900円→4990円を試着した。
実は、この新作ダッフルコートが目についた頃から、幾度も試着して、なかなかイケる、でも必要ない、といい聞かせるほど気になるダッフルコートである。
2020年の年末に、45Rのネイビーダッフルコートを購入した。コットンフランネル100%、約9万円。片や、ユニクロのダッフルコート、定価12900円、67% ポリエステル, 33% 毛、どう違うか、カラダに感じたかった。
しかし、ユニクロと45Rのダッフルコートを着比べたいのであって、ユニクロのダッフルコートが本当に着たいわけじゃない、と納得するのが大変だった。というか、こうして書いてる傍からユニクロダッフルコートを着比べたい欲求が湧き出てくる。本当に困った事態である。
と、ここまで書いて数日、幾度もユニクロダッフルコートが頭に浮かんで大変に困った。悩み続けて、思ったことがある。
45R vs ユニクロ、比較すること自体おかしい。45Rは、糸の段階からはじまる生地作り、企画、デザイン、パターン、製造、販売まで、自社で行われる。
流行とは一線をかくしたブランドで、シャツ、ブラウス、2.5万円から5万円あたり、ジャケット、コートは、10万円前後の価格帯であるが、何世代にも渡って着ることを想定している。
わたしのようなドケチ庶民が、衝動買いするようなブランドではない。でも2020年のコロナ禍真っ只中の年末、約30年修理しながら着たJUNメンズチェスターコートが型崩れし、なんとなく代わりを探していた時期だったから衝動買いしてしまった。
試着したら瞬時でこれはわたしのコートだ、と理解した。伝統的なダッフルコートは普通メルトンウール製らしいけれど、この45Rのダッフルコートは、コットンフランネル100%の一重仕立てだ。
コットンだからチクチクしない。一見ウールのような分厚いコットンフランネル生地が、ガシッと肩にピタリハマり、生地の重さが肩を中心にして地面に向かって落ちる。
肩幅にピタリとハマり、僅かにAラインになった身頃が、幅広のヒップに引っかかることなく、歩くたびに弧を描く。
防寒性も、例えば、気温7度の日、ヒートテックとミドルウールセーター、ジーンズ+レギンス、ヒートテック靴下、マフラーで装備する。通気性と暖かさの両立、安定のシルエットが広がる。
一方、ユニクロダッフルコートは、67% ポリエステル, 33% 毛、重量感の割に着心地は軽く、着た感じも気に入った。
困ったことにケチをつけるところが見つからない。着用するにつれ毛玉はできるはずだけど、ウールコートの宿命のようなもの、そもそも毛玉好きなので問題ない。
20代の頃、駅の地下街のメンズ服ショップ、店頭ラックにかかってたツイードで、足首に届きそうな丈のステンカラーコートを衝動買いしたことがあった。
たぶん、ウール100%ではなく、ウール、ポリエステルなどの混紡素材、ブランド品ではないしかなり安かった。
そんなメンズウール混紡ステンカラーコートを10年近く着た。ビッグサイズ、シワの気にならないツイード、襟元まで止めれば着ている服がすっぽり隠れ、肩からラグラン袖、ユッタリストーンと足元までツイード生地が落ちて、冬場にこのコートなしでは不安になるほど依存した。
体型と雰囲気にピッタリだった。思うに、自らのコート遍歴を振り返ると、マックスマーラのラップコート(アウトレット)とコムデギャルソンのコートを別にしたら、
上述のウール混紡ステンカラーコートにしても、日本未上陸のオランダの大衆ブランド、Mexxのレザーブルゾンにしても、買うつもりないのに、試着したとたん瞬時に買うしかない、と閃いたノーブランドや大衆ブランドが結構ある。
今回のダッフルコートの場合、ユニクロだ、という先入観が、判断力を鈍らせている。ユニクロ、GU、H &M、のタグコートを持ちたくない、着たくない。
反対に、ユニクロオックスフォードシャツ、ユニクロミドルウールセーター、ユニクロフレアジーンズ(大好き!)、ヒートテック靴下、GUのスニーカー、そして、今回のユニクロダッフルコートで、アンチブランド、オールユニクログループを気取りたい、
という、相反する感情で揺れ動いた。ユニクロのブランドイメージが、選択に大きく影響してる。
でも、コスパ最高のユニクロが行動半径にあり、試着したらすごくいい、買いやすい値段だからすぐ買い、気がついたらユニクロだらけ、それだけのこと。
ただ、毎シーズンの新製品に目移りし、せっかく気に入って買った服を、カラダに馴染ませない内に手放してしまう。
これはとても辛い。ユニクロの服が着たくないのではなく、次々にユニクロの新製品を買う自分に嫌気が差した。
ユニクロも45Rも、この服が好き、という感情の前では平等のはず、その視点を、この頃のわたしは見失っていた。
そこまで思いついて、服を断捨離ならぬ総とっかえすること。前回のブログに書いた新年の変身願望について、ついでに考えとくことにした。
冬のコートは持ってるが、厚手のMA -1的な防寒ジャケットを持ってない。欲しい、と思いついたのは、GAPのボア付きデニムジャケットが発端だった。
せっかくなら、ボア付きデニムジャケットより通年性の高い本格的なライダースジャケットが欲しい、ついでに増え過ぎたユニクロ、無印のトップス類も総とっかえして、厳選した最先端のトップスに入れ替えたい!
毎年の変身願望……。でも長く生きてるわたしは知ってしまった。モノによるイメージチェンジは、本質も変えない限り長続きしないことを。
ごちゃごちゃで汚ない部屋、無駄なモノだらけ、多くの服、でも好きな服ばかり。入れ替える必要などないし、生まれてからずーっと頭がごちゃごちゃの人間が、
今さらスタイリッシュ人間になどなれるはずもなく、間違いなくわたしは、あれ着たいこれ欲しい、欲望とドケチライフの狭間で一生を閉じるのは、ほぼほぼ間違いない。
やっぱりこのままでいい。秩序のないモノや服の在り方を否定しない、無理矢理スタイル化しない。
だからと言って、今着ない服を溜め込むのはこわい。行動半径でとどまり続けるのがこわいのだ。
いつだったか、NHKの「ドキュメント72時間」古着屋の回で、一心に物色してる若者が良いことを言ってた。ここで服を見つけ飽きるまで着たら、また売りにくるそうだ。
服を循環させる?と優しい口調で、答えた若い男が印象的だった。いいこと言うなぁ、そういう考え方は定着しつつある。
たった今必要ない服は、とりあえず社会に返し、必要になったら、誰かの不要な服を救い出す。すでに古着のアクアスキュータムトレンチコート、バーバリースプリングコートを破格な金額で救い出し着ているじゃない?実行済みだった……!
真っ当な服の循環が機能し始めた。到底手の届かない服を手に入れるチャンスが増えた昨今、暗いニュースばかり続いてるけれど、良いことも少しはある気がしてる2023年の1月末であった。
そんなわけで、新年に当たってとりあえず服の数は絞りこむつもりになれた……やっと決心がついた。
スタイルじゃなく、今日は、45Rのダッフルコート、昨日は、K.T(コムサデモード)の膝丈レザートレンチコートと、ユニクロの極厚ヒートテックの力を借りつつ着ること、その実感こそが、大事なのだ。