享年73、母のトックリセーターは、もっと生き続ける

2026年5月31日日曜日

スタイル 雑記 昭和 平成

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 あれほど服のことばかり気になっていたのに、クローゼットを眺めていると、服はもう充分、という気になった。

買ったばかりの服をカラダに馴染まないまま着て、肩が落ちている、とか、色味が暗いとか、新品の服というものは、カラダに馴染むのに時間を要する。

似合わないのを服のせいにしてしまう。

この頃思うのは、モノは、人間より長生きだ、ということ。

母が着ていた50年以上前のトックリセーターを、いまだに、毎年冬に1回は着る。太い編み目の鮮やかな紫のトックリを、母は、ウールチェックの膝丈スカートに合わせてよく着ていた。外着ではなく普段着だ。

たぶん、このトックリセーターは、母が家着にする前は、よそいきのセーターだったはずで、何らかの理由で、よそ行きから普段着に格下げになったものだ、と思われる。

母は、70歳になるまで病院知らずで、世界中を旅行していた。でも、あるとき、母の妹と、旅先で温泉につかったとき、鼻血が止まらなくなり病院に運ばれ、口蓋の裏側にメラノーマが見つかり余命宣告をされた。

自費治療を受け、当初あと数か月と言われていたのに、73歳まで生きた。だから、母がこの世に存在した年数は73年、かたや、ワタシの手にある母のトックリセーターは、推定、60年越え、このままいくと、セーターは、ワタシの寿命まで生きられるとして、あと、10年?20年?30年?母より長生きになってしまう。

かつての持ち主はとっくに消えたのに、昭和40(1965)年代から昭和50(1975)年代に、母のカラダを包み込んでいたセーターはまだ生きている。


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