東京にやってきたのは平成元年、1989年で、20代のわたしはとにかくモテたかった。しかし、モテたいと焦れば焦るほどひとは遠ざかり、
いつも空回ってるわたしは、女友達と、カフェ、ディスコ、渋谷、六本木、原宿、新宿をウロウロ、わたしという人間を見つけてもらうために、ひと通りの場所は行ったのである。
高級フレンチにイタリアン、銀座の寿司屋の常連になること、一杯1000円のコーヒーを何杯もおかわりすること、見栄えのする男と歩くこと、コンクリート打ちっぱなしの部屋に住むこと、高層マンションのバルコニーから夜景を見ること、とにかく実態のないフワフワしたイメージにしがみついた。
1980年代のトレンディドラマのパクリみたいで困ったものだけれど、明確なわかりやすいイメージに憧れた。
そんなフワフワした生活を3、4年送ったのち、地に足がついたひとと一緒になると、憑き物が落ちたように精神状態が安定した。
あの頃から30年たっても、わたしは本質的に変わってない。見た目を1ミリでも良くしたい、服が似合いたい、人に一目置いて欲しい、と願う気持ちは同じだからだ。
ガツガツしたところは30年前とゲンナリするほど変わらないけれど、最近では、どういうわけか、服と街の好みが、上手く言えないけれど一体化しはじめた……。
肩の力の抜けた、おしゃれとは言わせないパワーがある神奈川県川崎市の溝の口という街が好きだ。どこか故郷の歓楽街を思わせ、昭和の雰囲気……。