カラスかネコだ。いつもは、見えてない、知らないだけで、これも自然の摂理なのだ、と思い、気を取り直そうとしたけど、後味が悪くてこのままじゃ何も手がつかない気がした。
家に仏壇はないし、母の遺影の前でさえしたこともないというのに、名もなき小鳥に線香を1本灯した。
100均の線香から馴染み深い香りがした。細長い深緑の軸からゆらゆら揺れる煙を纏いながら、「鳥さん成仏してください、母さん元気ですか?」と、母にも話しかけた。
結局、家族や親しい人達がこの世から消えると、淋しいのは生きている私達だ。それとも死者の魂にも孤独感はあるのだろうか。
と……、お葬式や供養は、生きている人のためにあるのだ、と今更ながら気が付いた。
昭和8年生まれの父さんは、「日本人はクリスマスなんか祝っちゃぁいかん」と、毎年クリスマスになると、決まったように口にした。
そんな父さんを横目に、母さんは毎年骨つきチキンを焼き、ケーキを買った。全く宗教色のない子供のためのクリスマスだった。