不二家レストランに行った。実に40年ぶりだ。最後に不二家レストランに行ったのは、1980年代、20歳の頃だ。
広島市内の金座街と本通り商店街が交差する角にH&Mがあるが、その場所に不二家レストランがあった。
1階はmaruzen?という洋服のセレクトショップで、2階部分が不二家レストランで繁華街を見下ろせるガラス張りだった。
今もよく覚えているのが、ある日、母さんの妹であるおばさんが、昼下がりにいきなり家にやってきて「不二家のパンケーキを食べに行こう」とお茶に誘った。
食べたくて、いてもたってもいられないと言った様子だった。当時母が40くらいでおばさんが30歳前半だった。
すでに結婚して子供が2人いたけど、たまに周囲を驚かせるような衝動的な振る舞いが今も昔もステキな人なのだ。
不二家のパンケーキと言えばもう1人思い出す。学生時代、これから午後の講義があるという時になって、同級生から「今から不二家のパンケーキ食べに行こう」とやはり唐突に誘われたことがある。ちなみに彼女は衝動的なところの全くない、講義をサボるタイプでもない真面目なひとだった。
とにかく、昭和の不二家レストランが提供するパンケーキは、甘党の心を捉えて離さないボリュームと味で、昨今のパンケーキブームのビジュアルにも劣らない魅惑の一品だった。
チョコレートパンケーキ、マロンパンケーキ、ストロベリーパンケーキがあった、と思う。
40年もの時を経て、見覚えのあるミックスフライ、ハンバーグ、パフェなどのメニューの中に、ホットケーキを見つけた。
パンケーキより厚みのある2段重ねの焼き立てホットケーキだった。ミルキーソース付き、正直、あのボリュームはなかった。
でも、一瞬、広島の本通りと金座街が交差する角にあった不二家レストランにいるような気がした。
ランチタイムが過ぎてやっとひと段落ついた店内。実は、ホットケーキを食べて、後日又レストランに行ったが、2回とも色々な年代層で賑わっていた。
井戸端会議をしている女性たち、ランチミーティングをしている会社員、黙々と日替わりランチを食べている年配者や若者、地元の人々が日常的に使ってる感があり、こういう食のシーンにわたしはとても弱い。
不二家は、現在、山崎製パンの傘下で過去には色々あった。ここ40年もの間ほとんど不二家のことは忘れていたけど、また時々通いたい、と思った。
昭和に、若き日の母さんとおばさんの味覚を満足させ、幸せなひとときを提供した不二家レストラン、令和の人々が、歴史を引き継いだ内装とメニューを楽しんでいる、って単純に嬉しい。