〇磯丸水産の海鮮丼、シークヮーサーサワー、ドストエフスキーの馴染ませかた

2021年10月27日水曜日

溝の口 食べる

 先週やっと居酒屋に行った。コロナ以来初めてだ。

平日の16時半ころ神奈川県川崎市の溝の口にいたわたしは、カフェを探しながらヨロヨロ歩きながらキョロキョロしていた。

ヨロヨロ、キョロキョロは、わたしのいつもの歩き方だ。サクサク足取りで脇目もふらずというのがどうしてもできない。

所用がある時でさえ、ユニクロのダメージジーンズ!とか、

ユニクロメンズスリムフィットジーンズのダメージ加工は、単に穴が空いてるだけじゃなく、裏に当て布がしてある。すごい!

ユニクロスリムフィットジーンズ(ダメージ)

というのも、昨今、ダメージジーンズを履いたクール系ばぁさま、たぶん雑誌でそういう人を見たのだと思うけど、白髪頭、シワっぽいお顔にボディとダメージジーンズは、相性がいいことに思い当たった。

くたびれたカラダとヨレたお顔にダメージジーンズは、個人的にかなりぐっとくる、とりあえずわたしは好きだ。

その脱力感と、好きで履いてるのだ、なんか文句あっか? みたいな、元々ダメージジーンズが持つイメージと重なる感じが好きなのだ。

最近ダメージジーンズが頭の裏側に貼りついている。

こんな調子で、物欲に悩まされつつ歩いていると、スタバもサンマルクカフェも、ぎっしり人が詰まっていて、その隙間にすべりこむのは、ちょっと二の足を踏むなぁ、と通りを行ったりきたりしながら、なおもカフェを物色していると、

11時から17時までのタイムサービスドリンクの看板が目についた。磯丸水産だ。

磯丸水産

わたしはアルコールはお付き合い程度しか飲めない。だからコロナ以降は居酒屋に縁がなかった。でもよく考えてみると、昼下がりにちょい飲みという選択肢だってあってもいいはずだ。

溝の口には、昼間から営業している居酒屋や焼き鳥屋、焼肉屋が軒を連ねていて、カフェを探すより簡単だ。

酒豪一族に生まれた酒の飲めないわたしは、考えてみるとカフェより居酒屋のほうが、実は遺伝的に性に合ってるのかも知れない、とたまに思うようになった。

そんなところに、目についたサービスドリンクの看板である。生ビール税込319円、ソフトドリンクは一律209円とは!

スタバのコーヒーSサイズ税込319円、サンマルクカフェのコーヒーSサイズ税込230円と同じ価格帯だ。16時半の店内はガラガラである。悪くない…。

結局コーヒーがシークワーサーサワー税込297円に、ケーキが海鮮バラチラシ丼税込868円になった。

カウンターの隅っこの壁に寄りかかりながら、ドストエフスキーの「罪と罰」を読んだ…。

居酒屋に海鮮丼、シークヮーサーサワーに「罪と罰」?

人間の心の叫び、葛藤が延々と続く文体、19世紀と現代、ロシアと日本、時代と場所が全く違っても人間って本質は変わらないんだなぁ、と実感できる。

60歳過ぎでドストエフスキーが読めるようになるとは。年取ってよかったなぁ、と実感することのひとつだ。



去年、コロナが広がり始めたころ、87歳で誤嚥性肺炎で亡くなった父親は、お酒が好きなひとで、一緒に喫茶店やカフェに行ったことは、数えるほどしかない。

ある時、喫茶店で母、弟、わたしがコーヒーやジュースを頼むなか、父さんは、ホットコーヒーならぬ「わしはホットサケ」と言って、

やれやれまただ、と、家族が赤面したことがあった。お酒にまつわるトラブルは数えきれないくらいあったが、それと同じくらい楽しい思い出を残したひとだった。

長い間、酒=トラブルの思い込みに悩まされ、意識的に遠ざかってきた面もないとも言えない。溝の口の街中にいると、昼間の居酒屋、焼き鳥屋の店先で、ビールジョッキ、焼き鳥、焼肉のモクモク煙りにまみれながら、笑いさざめく人々が父さんの姿と重なる。

父さん、あなたの娘は、ようやく昼間っから酒を飲むようになりましたよ。伝えるのが遅過ぎた。

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